「プシュケを持ち上げるメルクリウス」

足首と兜に翼を持つ神メルクリウスが、驚くような螺旋の動きの中で、プシュケを腕に抱きながら、大地から飛び立とうとしています。若い女性は驚きに凍りついたようにも見えます。それは、半開きの口元、遠ざかる大地に向けられた手のひら、そして頭上に細長い花瓶を掲げる姿からも読み取ることができます。そこには恐ろしい女神ヴィーナスの命により、黄泉の国から危険を顧みず持ち帰ってきた美の秘薬が入っているのです。
ここに展示されているものは、大理石を混ぜた樹脂によるレプリカで、オリジナルの作品は黒みを帯びたブロンズ製です。訪れる人は、次第にねじれた形状やバランスの妙、細部の工夫に気づいていくでしょう。
作者であるアドリアーン・デ・フリースは、2世紀のアプレイウスの寓話の一場面を巧みに表現しています。そこには、神メルクリウスが人間界で最も美しいプシュケをさらい、クピドンと結ばせるためにオリンポスへ連れ去る場面が表現されています。また、そこに描かれているのは忍耐、勇気、そして愛の勝利です。
オランダ人彫刻家がプラハで神聖ローマ皇帝のために鋳造したこの作品は、スウェーデン女王の所有となった後、フランス国王に献上されました。古代ローマに着想を得たこの傑作は、まるでヨーロッパ全体の古美術を集結させたかのような存在感を放っています。